ハラスメント委員会が開催される
TODO:聴取される側が録音禁止でも、録音して問題ない理由について
委員会の構成員について
ハラスメント委員会は、大学の教職員や、外部の弁護士、医師、カウンセラーなどで構成されます。 どのような人が委員を務めるかは大学やケースによって変わります。
委員会の構成員について、数名の方が語っています。
山形大学の天羽教授(別名 apj)
調査委員会の設置はさまざまで、学部に設置することも、特別委員会になることもあり、どちらの場合も、学外の第三者を入れることができるようになっている。また、学部内に調査委員会を設置した場合も、学部内の人間関係だけで恣意的な判断がなされないように、他学部や他部局の委員がメンバーに入ることになっている。それでも、学部だともみ消されるかも、という場合は、特別委員会の設置を求めることもでき、この場合は直接本部(総務担当理事)が対応する。
反逆のバイオ研究者
私の大学は委員会が開催される場合、大学が委員の中からメンバーを集め、相談者と面談を行うことになります。 この時は、他学科の教員数名、事務の方数名、弁護士の方が参加されました。
一つの申立ごとに調査委員会がその都度作られます。調査は人事部の職員ではなく、中立のため異なる学部の教員が回り持ちで行い、数年単位で担当を代わるようです。このため、調査を慣れない人が行うこと、回り持ちのため調査ノウハウが引き継がれづらいことが問題になります。専門の職員が相談室に居るものかと思っていたので、この仕組みに強い不信感を抱きました。個人的には、教員に学務としてアカハラの調査を振る合理的な理由も理解できません。なぜ専門であろう相談室の職員が調査しないのか分かりません。
出典:今回の報道に出た大学で勤めています。このようなこと引き起こしてしまう組織のあり方や、報道からにじみでる保身的な動 | Peing -質問箱-
調査プロセス
調査プロセスは大学によると思いますが、 概ね以下のような順番で調査が行われるはずです。
1. 委員会の設置直後
調査結果が出るまで加害者と接触しなくて済むように、なんらかの手立てを講じてくれる場合もあれば、 ハラスメントが認定されるまでそのような対応がなく、ハラスメントが継続する場合もあります。
2. 被害者との面談
事前に相談員との面談に使用したレポートを提出しておくと話が早いでしょう。
3. 他の関係者への事実確認
概要
被害者との面談を踏まえて、事実確認が行われるはずです。
具体的には、
- 加害者の聴取
- 相談者に対する証拠の提出の要請
- 業者などの第三者が関わる場合に聴取
などが行われるでしょう。
事実確認に際して、関係者全員に守秘義務があることを伝えると同時に、 証言等によって不利益な取り扱いをしないということも伝えられるはずです。
(出典:隠蔽を疑う、その前に — Y.Amo(apj) Lab)
そのため、加害者が、聴取を受けた事を理由に被害者に当たる事は(大っぴらには)できませんし、 それをするとハラスメント認定事の処分が重くなるはずです。
懸念点
懸念点としては、加害者が聴取を拒否した場合、 委員会に権限がないと、これによって調査が頓挫してしまう可能性があります。
また、加害者などが何らかの事由により聴取内容などの守秘義務として秘匿しなければならない情報を漏らす可能性もあります。 このような場合は、守秘義務違反である事を報告書にまとめて調査委員会に提出し、もし裁判を開く事になった場合に証拠として利用するなどの対応を行っておくとよいでしょう。
また、聴取において、加害者が例えば「教育の一環として行った」などと話しアカハラを認めない場合、ケースによっては調査委員会の結論が「双方の話を勘案するに、ハラスメントと認定できるほどの言動ではなかった」といったものになる可能性もあります。このような結論になりにくいよう、証拠を集めておくと良いでしょう。
4. 調査結果に基づく処置
加害者への処罰
加害者への処罰の例としては次のようなものがあります。
- アカハラ被害の申し出があった事を教職員に対し通知または通告
- 文書または口頭により注意または厳重注意
- 研修の受講を義務付け
- 懲戒処分(戒告、減給、停職、降任、免職処分など)
- 被害者と加害者の関係調整を図る
処罰の内容は、労働契約法15条に違反しないように決定されます。
労働契約法15条
使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。
出典:https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=419AC0000000128
処罰の程度については、「アカハラと戦う」というサイトで次のように記載されています。
セクハラにせよ,アカハラにせよパワハラにせよ,懲戒免職となった例は,すべて身体接触が伴っているらしい。身体接触は,アカハラであれば,いわゆる,殴る・蹴る,ものを投げつけるなどといった物理的な行為が該当する。明確な規定があるわけではないものの,これに該当しない例で,免職まで追い込んだ例は,聞いたことがないとのことであった。
「学業・研究の妨害」や,「発言」などにハラスメント被害が留まっている場合は,「停職3ヶ月」や「当該教授の下でのゼミ制度の廃止」が,処分の限界であるそうだ。「厳重注意」などで終わるケースも少なくないらしい。
また、水無月さんは自身の事例について次のように語っています。
最後に、調査結果が委員会によってまとめられると、被申立人の所属学部/院の教授会で処分が決定されるようです。同じ所属でも過去の処分例と違ったり、処分に対する客観的な基準は見えません。 自分の訴えについて直接研究院長と話をする機会がありましたが、メールを見て、ちょっと行きすぎた指導程度にしか考えていないようで、その考えのズレに驚いたのを覚えています。処分に関しては、所属部局が決定するべきではないと思っています。
出典:今回の報道に出た大学で勤めています。このようなこと引き起こしてしまう組織のあり方や、報道からにじみでる保身的な動 | Peing -質問箱-
また、教員が処罰される事と、自身が研究を続ける事などがトレードオフになる場合があります。 例えば、指導教員の変更に教授の承認が必要な場合、 教授に対して「処分を与えない」という条件を提示することで、 指導教員を変更してもらうという要求を飲ませやすくなったりする、 といった場合があります。
その他の処置
調整手続き
調整手続きの例は次の通りです。
- カウンセリングの提供
- 休学の保障
- 指導教員やゼミの変更し
- 進級・卒業に必要な単位取得のための代替措置(加害者と今後一切関わらなくても単位取得できる措置など)を設ける
出典:
研究室や指導教員の変更に関しては、
部局内は小さなムラ社会なので、先生同士の面子のこともあって、 受け入れてくれる研究室、交代先の指導教員がない可能性もあります。 そのため、事前に学内の他の部局や学外に他の候補を探しておくと良い場合もあります。 この場合、それに合わせて、大学の該当事務室で、学籍の異動や退学に関する手続きの説明を聞き、余裕があれば書類を受け取っておくと良いかもしれません。
元指導教員(加害者)の推薦状が必要でも、被害者が加害者にをもらいに行くのは難しいと委員会が判断して、委員会が代わりに承認を取りに行く、という措置が取られるかもしれません。
ハラスメント認定例
ちなみにアカハラを訴えて認定されると、なんとこんな貴重な紙が一枚だけもらえます。世界にたった一枚だけ。殿堂入り、実績解除です。
— 水無月@アカハラ (@giugno_june) 2019年8月5日
こんな誇らしいこと他に無いので他には何ももらえません。処分に関する連絡も、謝罪も無しです。いやマジで。
処分に関しても報道ではじめて知るレベルです。 https://t.co/89YR1IYAVk pic.twitter.com/bWzVorEd7i
所用期間について
委員会設立から処置の決定までの所用期間は、ケースや大学によって異なるはずです。 通常は3ヶ月〜半年程度です。
ただし、数年かかる事例もあります。
調査のためにはその度に所属の異なる彼ら教員の日程を調整する必要があります。このため、日程調整が長引く場合が多く、僕の時は処分まで2年近くかかりました。受理から調査開始の最初の聴取までの期間が驚きの6ヶ月です。
出典:今回の報道に出た大学で勤めています。このようなこと引き起こしてしまう組織のあり方や、報道からにじみでる保身的な動 | Peing -質問箱-
この様な場合、大学に対して「内容証明郵便による迅速な調査の実施の要求」をすると良いでしょう。また、「迅速かつ適切な対応をしていないとして、債務不履行に基づく損害賠償請求」が出来るかもしれません。
委員会の立場について
基本的に委員会は中立
委員会は、中立な立場で調査を行います。 そのため、感情的に自分の悲惨な境遇を訴えても、同情して味方になってくれることはないでしょう。 事実を述べるようにすると良いはずです。
ただし、例えば教員が加害者、学生が被害者なら、 学生が学業を続けて卒業できることを最優先にして対応してくれるなどの配慮はあるかもしれません。 (出典:隠蔽を疑う、その前に — Y.Amo(apj) Lab)
しかし中立に動かない可能性もある
また、一方で、委員会が中立に動かない可能性も頭に入れておくと良いでしょう。 上述と矛盾しますが、様々な理由により、偏った行動を取る可能性があります。 (大学の名誉、教員同士の馴れ合い、単純に面倒くさいから動きたくない、など)
そのため、いくつか対策をしておくと良いはずです。
録音
相談室での面談においては、基本的に録音する必要はありませんでした。 一方、委員会との面談においては、基本的に録音しておくと良いでしょう。
聴取において、言った言わないのトラブルを避けるために、録音はしておくべきです。
ただし、ハラスメント委員会が、調査におけるの規則として、聴取する側(委員会)のみが録音をして、聴取される側が録音する事を禁止している場合もあります。これは、聴取する側(被害者や加害者など)が守秘義務を破って録音内容を(時に自身に都合の良いように編集した上で)ネットに公開する事などを懸念しての事です。調査委員会が録音内容の改竄を行わないはずだと判断できる場合は、調査委員会に録音を任せてしまってもいいでしょう。そうでない場合は、調査委員会に見つからないように録音しておくと良いでしょう。
聴取される側が録音禁止されていた事例として、水無月さんのケースがあります。
九大はハラスメントの調査のさい、聴取される側が録音してはいけないという内規があるのですが、同じく弁護士に相談して問題ないとのことでしたので、黙って録音しました。
— 水無月@アカハラ (@giugno_june) 2019年6月29日
禁じている理由は以前、被聴取者の録音内容が録音され流出して問題に成ったからだったそうです。 https://t.co/Qj6vssLJPg
調査の進行状況の確認
加害者が面談に応じず意図的に遅延させられたり、大学側が放っておいて沈静化を待っている可能性もあります。 そのため、調査が遅いと思ったら聞きましょう。次の一手を早めに打てる可能性が上がります。
弁護士に同席してもらう
聴取に際して弁護士に同席してもらったり、委員会との全てのやりとりを弁護士を通して行うようにしたりすると、調査委員会が放置やもみ消しをしずらくなるはずです。
特に、調査委員会が弁護士を雇っている場合は、こちらが法律に詳しくない事を利用して巧みに丸め込んでくる可能性があります。こちらも弁護士をつけておくと良いかもしれません。
また、後々、訴訟した場合、聴取内容や報告書は証拠として提出されます。 この事を踏まえて、Q&Aハラスメントをめぐる諸問題には次のように記載されています。
ヒアリング、報告書の内容は、訴訟に発展すると証拠として提出され、 被害を訴える被害者側、懲戒処分等が不当であることを主張する加害者側の双方からその公平性、信用性が争われることがあります。 後々の疑義を避けるために、詳細な議事録を作成する(ヒアリングの録音を含む。)ほか、弁護士の同席などが検討されるべきです。